2022年4月銀座東急プラザ内にオープンしたSpace Is the Place by Face Recordsでアートにフォーカスしたレコードジャケットの展示会『A WORK OF ART VINYL』に付随して、トークライブを開催しました。
『A WORK OF ART VINYL』の著者MAKI様、Discogs Japan 保田寛史様、FTF株式会社の武井進一が対談し、ウォーホルやバンクシーなど、現代アーティストによるレコードジャケットにフォーカスし、アートとしてのレコードの魅力を、レコード蒐集家、老舗レコード屋、Discogsマーケットの三つの視点から立体的に語り尽しました。
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MAKI:
僕が提唱している「アートヴァイナル」というものなんですけれど、この名前は勝手に僕がつけました。
英語として正しいかどうかも分かっていないですが「ヴァイナル」っていうのは武井さんとかもご存じかもしれないですけど、アメリカではレコードって言ってもあんまり通じないかな。
アメリカでは「ヴァイナル」って言っていると思います。
「ヴァイナル」イコール「ビニール」なんですけどね。
ビニールって塩化ビニールでできているのがレコードなので、英語の発音に近い感じだと「ヴァイナル」になります。
「アートヴァイナル」って言ったほうがかっこよくて世界的にも通じるかなと思いまして、この本も「A WORK OF ART VINYL」ってしてますけど、どういった意味かというと「WORK OF ART」で「芸術品」なんですね。
「芸術品のレコード」という感じになるといいなぁと思ってやっております。
この本を隔月でやらせて頂いていて、1個目は昔の作家から現代アートまで、2番目がアンディ・ウォーホルをやっていて、3番目が、ニューヨーク80年代のアーティスト、4番目はグラフィティアート。
ニューヨークの地下鉄に落書きしてあるのとか、ニューヨークの地下鉄って、今は綺麗で落書きできない素材に変わっていて、落書きがすぐに消せる車体になっていて今はほぼかかれていないですね。
80年代はそれはもう世界中のアートって、いうくらい。
そこから「電車に描けないなら壁に描こう」っていって広がっていったのがグラフィティアート。
今は渋谷とか色々なところでいろんなアーティストさんが描いていますよね。
その流れをこの本で一つお伝えできたらなと思って、80年代ヒップホップのアーティストからバンクシーまでが、このVol.4になります。
今、いろんな企画を考えていてVol.10くらいまでは構想しているところです。
日々こういうアーティスト作品に近いレコードを、レコード屋さん、ネット、Discogs上で探しています。
もう一つお伝えすることがあるとすれば、僕はアートだと思って集めてはいるんですけれど、実際アートコレクターからすると印刷物じゃないですか。
「アートじゃないですよね」と言われます。それはその通りだと思います。
ただ僕がバスキアが大好きで、バンクシーが大好きで、買いたいと言っても何億っていうお金を用意しないと買えないです。
買えたとしても一生一枚とかそんな話になる。
それだったら数千円とか高くても数万円とかで楽しむのもありじゃないかな。
2000~2500枚とかあるかも。
ゴッホとかマティスとかクラシックなジャケット、バンクシー、バスキア。
最近のアーティストも色々。
すぐそれくらいになってしまう
今回は右の方は2列、4列をアンディ・ウォーホル。
その次は 馴染みがあった キースヘリング8枚。
リキテンシュタイン ウォーホルと同じくらい 非常にポップアートを扇動した。
それからその隣、黒いのがみんな大好きなバスキア。
上のがヒップホップ、初期のラメルジー。
ヒップホップ好きが最後に欲しい一枚、そんなレコードでありますが、あとでいろいろデータを見ながら喋りたいです。
その下は、ウォーホルと馴染みのあったデビー・ハリー。
デビー・ハリーはウォーホルと仲良しでした。
それを書いたのがスティーブン・スプラウス。そこのキャプションにも記させては頂いたんですが、ルイ・ヴィトンのモノグラムの上に落書きをした人がいますよね。
皆さんもなんとなく見たことがあるかも知れません。
あれをやったのがスティーブン・スプラウス。
あまり日本では馴染みがないですが、ニューヨークではカリスマ的存在でした。
ただ、生涯あんまりビジネスに成功できなかった人で、割と早死にしてしまったとか。
惜しまれる才能みたいな感じの人だった。
そのスティーブン・スプラウスが字を書いてます。
「DEBBIE HARRY ROCKBIRD」っていうカラーの文字がありますよね。
これを書いた人です。
写真家がデビー・ハリーを美しく撮っています。
その後ろにカモフラージュパターンがあります。
これがウォーホルのカモフラージュという作品ですね。
これを借りて、カモフラージュのパターンをウォーホルにスプラウスが借りて、服のコレクションを作ったりしています。ウォーホルとスプラウスの服の競作がこのレコードジャケットに表れてると感じます。
80年代を感じさせるデザインですが4種類のカラーバリーションがあって4種類並べると壮観です。
左上はロバート・ロンゴっていう人ですね。
僕が非常に好きなアーティストで、右上のがグレン・バランカっていう、99レコード、ESGというグループが在籍しているレーベルの12インチシングルですね。
グレン・ブランカTHE ASCENSIONというLP このイラストこれは何してるんですかね?助けてるのかいじめているのか、ちょっとよく分からないですけど。
非常にいい感じの、なんとも言えないアーティスティックな絵で、非常に好きなレコードジャケットですね。
その下の犬みたいな狼みたいなの、これもロバート・ロンゴの代表作です。
実際、この作品があります。
これはHOLY GOAST!というアーティストで、裏と表、見開きのジャケットでこういう形になっていて、ロンゴの作品自体も大きいもので、ロバート・ロンゴの結構人気な作品です
左上はロバート・ロンゴに影響を受けたアーティストで、CULTS。ロバート・ロンゴに非常に影響を受けているデザインです。
ロバート・ロンゴ自身も、この子達の、このバンドのジャケットを一枚手がけているのがあるんです。
多分、仲がいいんじゃないかなあと思うんです。
非常にロバート・ロンゴに影響を受けた感じのジャケット。
LPも実はロバート・ロンゴではないのですが、ロバート・ロンゴチックというところであそこに並べてみました。
という、ロバート・ロンゴのお話でした。
左列のその下。皆さん大好きなレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかね。ソニック・ユースとかね。
左側のLOVEっていうのは有名なロバート・インディアナっていう新宿のアイランドタワーにもありますよね。
右側の列がメル・ラモスっていう、レイジのセカンドでしたっけ?
メル・ラモスはアメリカでは非常に有名なPOPアーティストですが日本ではあんまり馴染みがないのかな?
こういう50~60年代のアメリカっぽいイラストを描いている方で、キャプションの方にも他の作品を載せましたが、ポップアート界ではすごく人気のある作家さんではあります。
その下、看護婦さんが、みんな大好きソニック・ユースの、みんな大好きリチャード・プリンス。
リチャード・プリンスはみなさんご存じじゃないかなと思うんですけど、それがすごい人気で、リチャード・プリンスといえばそれだよねと認識されている方も多いんじゃないかなと思います。
実は写真がすごく秀逸な方で、これまだ開けてないですけど、「エレクトリック・トリム」っていうアルバム。普通に道路を撮ったような写真に見えるんですけど、やっぱり味わいがありますよね。
さすが才能だな、この辺は、って思う。
すごくいい写真ですよね。
リチャード・プリンスは本当に写真にテクニックというかアート性がある作家さんなんですけど、そのソニック・ナースの看護婦さんの絵は、そこのキャプションにも書かせて頂いたんですけど、昔の、多分80年代くらいじゃないかなと思うんですけど、アメリカの恋愛小説、割とチープな恋愛小説の表紙をプリンスが撮影をして、それを引き伸ばした上から、看護婦さんのマスクと帽子を付け加えて描いています。
写真の上にペインティングしているっていう、写真家リチャード・プリンスの発展系の作品っていう感じで、結構いいかなと。
ルイ・ヴィトンがそれに感銘を受けたのか、このイメージのレディースのコレクションを2008年にやっていますよね。
っていう感じのものです。
アメリカの50年代〜2000年代初頭くらいまでのアートジャケットを少し並べてみたっていうのが今回のテーマですね。
そして一番後ろにあるバナナ20枚。
僕と武井社長で集めたいろんなバナナ。いろんなバナナ。
オリジナルもあれば今はそうでもないんですけどあんまり価値がないもの。
昔は安かったんですけどね。
これも最初だったらそんなに高くないよっていう、1000円~1500円だったんだよっていう感じだったんですけど、今は再発でも、どうですか、5000円くらいしますね。
っていうようなバナナをいろんなタイプで集めてみました。
ここに貼ったものの紹介をすごくだらだらしましたが、こんな感じでウォーホルの話をちょっとしてみようかなと思います。
このバナナのジャケットっていうのは、1963年のヴェルヴェット・アンダーグラウンドですよね。1963年だったと思うんですけど。
ウォーホルが、60年代になる頃には、結構もうシルクスクリーンのスターになっていて、ギャラリーで個展をやっていてすごくたくさん高い値段で売れるようになっていた頃に、ウォーホルはやっぱりすごいアイディアマンで、活動が早いので、もう既にその頃、映画もやりたい、雑誌もやりたい、音楽もちょっと何かやりたいっていう風に考えて、どこかのライブハウスで実験的なパフォーマンスをやるために起用したのがヴェルヴェット・アンダーグラウンド。
それが結構ウケたらしいですね。
なかなかいいね、面白いね、と。
バナナのジャケットの後ろに写真があるんですけど、その写真は多分その頃のものじゃないかな。
それが非常にウケて、ならばレコードを出そうってなったのがあのバナナの有名なアルバムで。
これ自体は、普通ウォーホルっていうと、大きい作品があって、それをジャケットに落とし込んでいるものが多いんですけど、それは確かないですよね。そういった意味の作品は。
バナナステッカーの大きいのをウォーホルが持っているのは見たことがありますが、バナナの原型の絵だよっていうのが展示会で飾られているのを僕は今のところ見たことがないですね。
このバナナのレコードがウォーホルの作品の完成形なのかと思います。
ということだけではないですが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはロックファンからものすごく神格化されているグループなので既に高いんですけど、もう結構な値段にいっちゃっていますよね。
オリジナルプレス的なものだと。
保田:
そうですね。
Discogsで私が見ている中でここ4、5年くらい、Discogsのデータで見られるのはここ4,5年だけなんですけど、そこで見ていると、データですごい値段が極端に上がっているというよりは、ずっと人気があるので値段が落ちずにいるっていうところなんですけれども。
見てみると、やっぱり綺麗な状態でバナナのステッカーがついている状態のものがもう出てこないっていうのが現実なのかな。
だいたいDiscogsでは大体2000~3000ドルくらいで普段取引されていて。
Discogsで毎月高額取引アイテムトップ50っていうのをやっているんですが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのこの2個の作品だと去年だけでも、毎月から2ヶ月に一回くらいはもう必ず高額で取引されているっていう状態が続いていて、たとえば2022年2月が最近の記録で、1967年のプレスで3210ドルで取り引きされています。
ただこれがいつのプレスなのかっていうのを見ると、イーストコーストプレッシングっていうところですね。
プレスは僕は専門じゃないのであんまり分からないので、武井さんにお聞きした方が良いかもしれません。
Verveの初期プレッシングっていうんですかね。
武井:
Verveは、西海岸と東海岸のプレスがあるんで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはニューヨークのバンドなので、東海岸の方がオリジナルに近いんじゃないかっていうだけで高いと思います。
MAKI:
そうですね東海岸プレス、モノラルっていうのが高いですね。
僕はオーディオマニアではないのでモノラルとステレオの良さはあまりわからず買っていますが、とりあえずMONOって書いたら高いっていう風潮がありますよね。
保田:
Discogsのデータを見てると初期のプレスには3種類あるっていうのが書かれてまして、その中にもこの辺も武井さんが詳しいと思われるんですけれども、イーストコーストプレスのトルソーでしたっけ。
武井:
トルソーって言われている写真のものが高いですね。
MAKI:
なぜトルソーって言われているのか分からないですがエリック・エマーソンさんっていうコメディアンがいて、ステージのルー・リードの頭の上に投影されている、そこに写っているんですね。
それが映っていたばっかりにそのコメディアンが肖像権を訴えてきた。
その肖像権のお金は払っていないというように言われています。そこの上にシールを貼ってその顔を隠したんですね。それが初期プレス。
2枚目からは写真の顔をレタッチで消しているんですよ。
だからそれがあるのが確実にファーストプレスで、2枚目からは顔がなくなっている。
その顔があるやつ、顔が見えているのが一番最初の訴訟を起こされる前に出荷されて流通していたものなので、かなり最初期だろうということで僕が持っているのが、ここにシールが貼ってあります。
さっきの、今の話をもう一回見えますか?
ここに顔があるのが、ちょっと見にくいですけど、ここに顔がいるんですね。
武井:
これがトルソー。なんでトルソーっていうんでしょうね。
保田:
どこかにトルソーって書いてあるっていうふうにDiscogsのデータには書いてありました。
MAKI:
よく見ると顔が、逆さまの顔なんですが、それが写っているっていうことで、それが物議を醸したそうです。
顔が出ているもので綺麗なものは高く売って、シールドも出たことがあるそうですね。
保田:
そうですね。
綺麗なもので、バナナがついている完品だと普通の状態で2000~3000ドルっていうところなんですけれども、確か去年だったと思うんですが、Discogsのデータを見てみると、一つだけ特出したものが、これが2021年7月25日に取り引きされたもので、コンディションはジャケットがmint、レコードがmintなんで、これもう完全に完全にシールドだと思うんですけど、デッドストックコピーということでこれ桁違いの9000ドル、日本円にすると100万円以上超えていますよね。
なかなかもう滅多にお目にかかれないと思うんですが、時折Discogsにこういった商品が出てきますので、お金に余裕がある方は、ぜひDiscogsをチェックしてください。
MAKI:
そんなロックファンとウォーホルファン両方がクロスオーバーするのがこのバナナのジャケットなので、よりどんどん上がっていくっていう。
なかなかシールタイプのバナナのジャケットは結構今高いですね。
あれがシールになってるんですよ。
知っている方も多いと思うんですが。
「Peel Slowly And See」「ゆっくり剥がしてみてね」って小さく書いてあるんですね。
そう言われたら剥がしたくなるじゃないですか。
剥がすと薄い紙なのですぐにボロボロになるんですよね。
バナナのみきっていうんですか、上の細いところ。それが取れちゃうんですよね。
なので、この中にもありますけど、あそこがボロボロになっていたりなくなっていたりするのがあります。
これはもう海外のものでも同じで、バナナが半分ないとか全部ないとか結構あるんですよね。
ということで、バナナのシールが捲られてないよねっていうものだったらさっきみたいな価格になってしまう、そういうコレクターの話ですけどね。
薄いビニールのラップがかかっていますよね。
この開けていない状態がシールドっていう状態で、これが50年とかもっていたら「えー、まだ未開封ですか」っていうことで高くなる。
だから僕もあまり開けたくない。
音楽はだいたいサブスクで聴いていますのでね。
レコードはほぼ飾るために買っています。
バナナのレコードだけでも喋り出すと止まらないっていうのがありますね。
多分アート・ヴァイナルっていうものが今後もっと認知が高まってくると当然ながら、象徴的なというか、まずこれだよねっていうモノになるのが、バナナのジャケットですよね。
武井さんはかなり色々なバージョンを持っていますよね。
後ろにある、あの紫の帯がついているのとかね。
10年前まではそんなにまた今度安く買えるんじゃないかって思っていたんですけど…最近はもう…
武井:
だいたい1万円くらい…?
MAKI:
3万円くらいしちゃいますよね。
武井:
3万円…
MAKI:
僕、5000円くらいになったら買おうと思って、その時を待っていたら3万円くらいになってしまっていたっていう…
6800円とかで売っていたっていう印象があるんですけど、ちょっと買えなくなっちゃった。
今後はもっと上がるんじゃないかと。
3万円で買っておけばよかったのに10万円とかになっていくのがこのレコードじゃないかなって思いますね。
武井:
そうですね。
これから外人のお客さんが多分また戻ってくると、みんなレコード屋に来ると思うのでそうすると取り合いになるでしょうね。
MAKI:
そうですね。
外国でもobiっていうと通じますもんね。
よく書いていますもんねDiscogsでもobiって。
保田:
そうですね。
やっぱりDiscogsを見てみると、obi、日本のレコードっていうのはすごいプレミアがついていて、プレスの品質がいいていうのももちろんですけれども、あと綺麗っていう、日本人が綺麗に保管しているっていうのもありますが、やっぱり一番は帯がついているっていう。
これは他の国にはない文化なので。
obiってレコードの横についている販促のために情報がついている、あの帯ですけれども、あれが非常にやっぱり価値があると外国人の人が見ていらっしゃって、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに関しても、やっぱり帯がついているものは、近年高くなっているというよりは、もともとやっぱり人気があって、全然他の国のヴェルヴェット・アンダーグラウンドよりも、日本の帯がついているプレスっていうのは全然高いかなっていうところはありますね。
今回の対談のためにヴェルヴェット・アンダーグラウンドのプレスを見ていたんですけれども、60年代とか70年代っていうのは、もともとプレスが少ないので、近年値段が高騰しているっていうよりは、綺麗なものがないっていうところはあるんですけれども、それ以降の比較的新しい80年代だったり、2000年代のプレスも既にもう値段が倍くらいになっちゃってきているので、全体を通して高騰してきているのかなっていうのはDiscogsを見ていて感じますね。
Discogsの機能の中に、特定のレコードを自分のほしい物リストに登録するという機能があるんですけれども、まあ欲しい人の人数を見ていても、桁違いに多いんですよね、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの、こういうウォーホルの作品っていうのは。
もう2000人とか3000人とか。
やっぱりこの作品は、Discogsのデータ上を見ていても、まあアイコニックな作品の一つなのかなと思います。
MAKI:
o-b-i、obiって国際用語になっていますもんね。
武井:
そうですね。はい。
MAKI:
アメリカ人もobiって言うんですか?
武井:
アメリカ人もobiって言いますね。
保田:
obiとかobi stripって言いますね。
MAKI:
日本の宝というか、日本独自のものが、評価されるってありがたいですね。
武井:
インナースリーブとか、歌詞カードもそうですね。
MAKI:
外国盤でも歌詞カードはあるものはありますけど、日本みたいに全部ついているってあんまりないですもんね。
そこがやっぱり日本の生真面目さというか、ファンを大事にする的な、レコードを大事にするっていうところが非常に現れた文化で、それが昔のものであればあるほどありがたがられる。
日本のレコードって結構貴重だったりしますよね。
そういうお話でございました。
というウォーホルの話をして、次はバンクシーですね。
結構、バンクシーはみんな好きだよねっていう感じだよね。
「バンクシーはどうも…」っていう人はそんなにいないんじゃないかな。
僕は、バンクシーの作品が好きっていうよりは、バンクシーの生き方というか、考え方とか叛逆性というか、「なんとかテロリスト」って言うじゃないですか。
アートテロリストみたいな。
そういうところがすごい好きで、アニエス・ベーのCEOのローランさんとか、すごくバンクシーのコレクターで、今回のこのVol.4ですね、ここに結構、バンクシーの作品を後半すごくたくさん載せているんですけど、ローランさんががいてできたっていう、そういう感じです。
それがVol.4 graffitiです。
さっきもお話ししましたが、地下鉄から描いていったものから、どんどんどんどんストリートアートっていうものが変化していって、バンクシーがもう、僕はこういうふうに解釈しているんですけど、壁とスプレーでやるだけがストリートアートじゃないよね、っていうのが多分バンクシーのメッセージなんじゃないかなと。
ただ自由に表現する。
ギャラリーで見せるだけがアートじゃないよね、っていうストリートアートの精神というか。
っていうものを、バンクシーが、「僕たちだったらこう考える」っていう、そういうのをやっているのがバンクシーの色々な活動じゃないかな。
だからSNSも使うし。
っていうところかな、と思っている。
バンクシーの絵が好きというより、バンクシーの考え方が好きですね、僕は。
今回、このVol.4の、あんまりたくさん数はないですけど、パリス・ヒルトンのノベルティをつけますよって、インスタグラムなどでちょっとお話ししていますが、これも一つストリートアートの考え方じゃないかな、と思うんですよね。
これは知っている人はよく知っていると思うんですけど、簡単に説明すると、パリス・ヒルトンっていうセレブなアーティストがいらっしゃいますよね。
好きな方もいらっしゃいますし、まあそうでもないっていう方もいらっしゃる。
なんとなく人気があって世界的にセレブだっていう認知はみんなある、パリス・ヒルトンさん。
バンクシーは、一人じゃないって言われていますよね。
主犯格はいるけど、バンクシーっていうのはプロジェクトで、世界各国に、まあ多分日本にも一派がいるんじゃないかって僕は思っているんですけど、まあロンドンでも多分。
バンクシーはブリストルでしたっけ。
ブリストルですよね。
ブリストルが故郷らしいんですけど、まあロンドンでもブリストルでも活動していますので、おそらく何人かがバンクシーチームの人がいて。
で、話が戻って、このCDなんですけど、500枚、バンクシーがパリス・ヒルトンのCDを購入したそうです。
店頭でね。
ロンドン大型CD店舗でバンクシーのチームが、1店舗に500枚はないと思うので、いろんなところで多分10枚とか買ってらっしゃると思うんですけど、その500枚を集めてきて、バンクシーの多分、秘密結社のオフィスがあるとして、そこで、 ダーティーファンカーっていうアーティストがいるんですけど、まさにこれですね。
このダーティーファンカーっていうアーティスト、これ音楽的にはどうなんですかね?
保田:
エレクトロかな?
MAKI:
エレクトロ、はい。
僕はあんまり好きじゃないんですけど、持っています。
前はそれを3枚並べたりとかして。
このレコードですね。
こんなふうにダーティーファンカーっていうアーティストなんですけど、ダーティーファンカーのCD-Rに、(パリス・ヒルトンのCDを捨てて)入れ替えて、ジャケットを、これはパリスのジャケットなんですけど、ジャケットを開くと、本来どんな絵だったか忘れましたけど、ホームレスの絵が背景にあったりとかして、コラージュしているんですね。
パリス・ヒルトンとブルジョワジーを揶揄と言いますか、格差社会的なものをね、何かメッセージとして、バンクシーは伝えたかったんでしょうと。
っていうのをコラージュして、まあおそらくカラーコピーだと思うんですけど、カラーコピーですよね。
カラーコピーして綴じて、コラージュして、CDジャケットを捨てて、自分がコラージュして作ったものをCDケースに戻して、その500枚を、またCDショップに戻しにいったわけです。
万引きって盗んでくるじゃないですか。
それを万置きする、預けてくる、勝手に置いてくる。
もとは買っているものなのでね。
お店の人からしたら買っていただいたしねっていうのはある。
とにかく自分が創作したものを置いてくる。
それがロンドン中のCDショップにあって、おそらくですけど、次の日とかその次の日とかにバンクシーがSNSでこういうことやったよって言って大ニュースになった、っていう。
やや話が脱線しましたが、バンクシーのストリートアートの考え方はそういうものじゃないかな。
壁に書くよ、グラフィティだよっていうのだけがストリートのメッセージじゃないよねっていうことをバンクシーが言っているような気がしていまして、今回のグラフィティアートの特典につけた、そういったものになっています。
というバンクシーなんですが、さっきはね、ダーティーファンカーの目が隠れている。
目が隠れていないやつがあるんですよ、実は。
レコードでね。
A WORK OF ARTVINYL Vol.4の表紙はこのダーティファンカーの目線無しのヴァージョンに寄せています。
僕が、20年以上お付き合いしているデザイナーさんに、これに近づけるためコラージュしてくれと、これ裏と表がね、表が目を隠していて、裏が口を隠しているんですね。
これをコラージュしたら、顔出るでしょと。
それで作ったのがこの表紙ですね。
これもバンクシーのストリートアートの精神に感銘を受けています。うまくパクればいいんだよってバンクシーがよく言っていて、そのメッセージを実はこの本の中にも書いています。
うまくパクったらそれが絵画だしアートだよねっていうことを言っているところに、非常に影響を受けて、これを作りました。
これは今いくらくらいなんでしょうね?Discogsで。
目が隠れていないのはめちゃ高いんですよ。
ダーティーファンカーで調べると出てきます。
保田:
そうですね。
目が出ていないやつだとまあ500ドル近辺というところですね。
ちなみに目が出ているやつだと高いですね。
1000ドルを超えていますね。
MAKI:
ですよね。
一回ヤフーオークションで10万円で出た時があって、見たんですよ。
瞬間で売れて、僕もちょっと10万円で買うべきかどうか迷っているうちに買われてしまって、そこから見たことがないですね。
これがちょっと分からないんですけど、目が隠れてない方のは、シルクスクリーンかもしれないと言われています。
シルクスクリーンだったらバンクシーが実際に刷っていますので、非常にこう、いわゆるバンクシーの作品の数千万円とか億で取引されているものと同等の価値かな。
というバンクシーは非常に顕著に高い。
シュレッダーの事件がありましたよね。皆さんよくご存じのように。
あそこから一気に加熱していますよね。レコードの方でもそうですし。
ちなみに僕の名誉で言いますけど、ちなみに昔、100円の某レコード屋さんの100円セールの中から見つけたっていうね。
その時はバンクシーがまだそんなに流行っていなかったですからね、おそらくこの本に載っている他のバンクシーも、多分その前後にあったと思います。
ダーティーファンカーもあったと思います。
ONE CUTっていうa-アーティストが結構有名なんですけど、きっとそこにはONE CUTも100円であったと思います。
ただ、その時は僕は別にバンクシーを探していなかったので、よりいいヒップホップとかそういうのを探していたので、多分気づけなかったんだろうなっていう。
今だったらそういうのは、きっと「うわ、あった」ってなったんでしょうけど。
その当時もそんなにバンクシーレコードっていうのはまだ、レコード屋さんも意識していなかったですし、我々も意識していなかったので。
これはたまたまバンクシーの「ケイト モス」っていうのを知っていたので、これいいじゃん、ジャケットいいじゃんって思って買いました。
買えてよかったっていう一枚ですけど。
ちなみにダーティーファンカーの他のレコード。
これは100円で買いました。
これはつい先日のフェイスレコードの100円ガレージセールで買いました。
出してくれてよかったって感じです。
100円以上の価値はないんですけど、非常にデザインが凝っていてすごくいいんですね。
ゲスト:
それってバンクシーなんですか?
MAKI:
バンクシーじゃないと思います。もちろんクレジットもないのですが、なんかすごく味わい深くないですか?
これがひょっとして、SNSでバンクシーが実はこれもやったんだよねって言ったら明日から10万円になります。(笑)
これ、デジタルの文字がまるで書いたかのように、これよく見てもらうと分かるんですけど、普通のデジタルのフォントではないんですよ。
すごくいい感じの、なんとも言えない、変なバランスのデジタル文字をさらに曲げている。
バンクシーがやっているんじゃないかって思うくらいの、なんか味わいがありますね。
そしてこれは100円なんですね。
音楽的にはそんなに価値がないけどバンクシーがやったとしたら非常に高くなる、それがバンクシーの作品。
ここにたくさん載っていますので、ぜひ皆さん見てください。
バンクシー、他に高いのもあるんですかね。
ちなみにこのパリスのCDっていくらになるんでしょうね。
保田:
これはさっき見ていると、600ドルくらいですかね。
真ん中のあたりが。
ちなみにバンクシーで、一番高いとされている、Discogs上で一番高いとされているものがロイクソップっていう、確かフィンランドだかデンマークのアーティストのアルバムなんですが、通常バージョンだとバンクシージャケットじゃなくても、全然二束三文とか大した値段がついていないんですけども、バンクシーが作ったと言われる、バンクシーの手でシルクスクリーンでやっているっていうことなんですけども、確か100枚限定だったと思うんですけれども、これが6800ドルなので、まあこれはだいたい70万越して100万近くするっていうことなんですが。
でもこれって7、8年前くらいまでは全然大した価値のないレコードだったんですよね。
Discogsで見てもらうとだいたい1000ドル、750ドルとか。
それが今やもう100万円とか、80万円近辺なので、この7,8年で、そうですね、2013年の時点では1000ドルなので、最後に売れたのが7500ドルなので、もう7倍とか8倍近く、顕著にバンクシーはDiscogs上で値段が上がってるレコードの一つですね。
MAKI:
金融商品みたいな感じになっていますね。
保田:
レコードは株とか、投資のような形になっていますね。
ゲスト:
メルカリで240万で売っている。
このスプレーアートのやつが。
MAKI:
ちなみにそのロイクソップの、この樹木みたいな山の絵みたいなの。
おそらくこれ僕の予想ですけど、バンクシーはこれを見てさっきの木のやつをステンシルアートで作ったんじゃないかなと思いますね。
これも木がのっていますよね。
多分こっちが先じゃないかなと思うんですけどね。
これは100円です。これ100円でよく売っていますよね。
これは4枚ぐらいあります。
これも人気が出てくると面白いですけどね。そのバンクシーがやったかどうかっていうのは、もちろん数の問題もありますけど、それだけで10000倍くらい値段が違うというものです。
というバンクシー。
バンクシーだけが顕著に高いですね。
なんかバンクシーのチンパンジーのありますよね。
チンパンジーというかサルというか、カラーバリエーションの左上の、全然出てこない。
めちゃめちゃ高いんですけど。
これはバンクシー自体が音楽にも関わっているらしいです。
これは今いくらぐらい?
これちょっと開けてもらってもいいですか。
保田:
1000ドル近辺ですね。
MAKI:
これは某ディスクなんとかさんで3年毎くらいに6万円で、各6万円で3色揃って言っていて、買うべきかどうかすごい迷ったんですが、でもなくなっちゃいましたから売れたんでしょうね。
っていう、バンクシーものはとにかく高いですね。
っていうバンクシーのお話でした。
武井:
そういえば昔、ブリストルの音楽が好きな人の間で、マッシブ・アタックのメンバーがバンクシーのやつじゃないかっていう噂がありましたよね。
MAKI:
ロバート・デル・ナジャ。3Dのですよね。
武井:
あれってどうなんですか?
MAKI:
メンバーだと僕は思っています。
ただ実際のそのスプレーアートを描きに行く人ではないと思います。
3Dが書いている絵とバンクシーが書いてる作品は全然違いますのでね。
絵のタッチが違いますね。
じゃあなんでバンクシーって正体がわからないのかっていう疑問があると思いますけど、これはただイギリスの方が言ってらっしゃるんですけど、イギリスはやっぱり紳士の国なので謎めいておくべきことを謎めいておくようにみんなが協力してくれる国らしいんですよ。
日本だとそうはいかず直ぐに情報が拡散される。
イギリスはやっぱり当然これだけ活躍してますし、知っている人もいっぱいいて、更に駆け出しの頃もあったと思うので、正体を知ってる人も当然いると思うんですよね。
それが広がらないと言うのは、やっぱりそういうお国柄というか国民性と言うか人間性でより神格化されているのかなと思いますね。
日本の有名な方たちでもバンクシーを知っているよって言う人、聞いたことないですもんね。
やっぱりみんな謎のままって言う。
でもそれがすごくファンタジーでいいなって思える、そういう奇跡のような人たちですね。
なのにSNSもめちゃめちゃ使う。
すごく一般的でもありながら神のような、こう存在を隠している。
ほんとにすごいなっていう、そこにすごい感銘を受けています。
そういったバンクシーのお話でした。
【A WORK OF ART VINYL 商品概要】
【『A WORK OF ART VINYL VOL.5 – the beginning of NEW WAVE -』 展示会開催】
現代アーティストの手になるレコードジャケットを集めたアートレコードガイドブック『A WORK OF ART VINYL』シリーズのVOL.5が7月上旬に発売されるにあたり、記載のレコードジャケットの展示会を、Space Is the Place by Face Records(東急プラザ銀座5F、運営:FTF株式会社)で開催します。
今回のテーマは”the beginning of NEW WAVE”
80年、世界各地で同時多発したNEW WAVE特集です。